※ネタバレを含みます※
加納朋子『コッペリア』(講談社文庫)
創元推理文庫から復刊してました。
気が付くと2025年1月に創元推理文庫から復刊してました。
元々講談社文庫で出版されており、中古で購入したまま積本となっていたのを書店で見かけた際に思い出しまして、急遽読みました。
雰囲気としては一貫してダークでシリアス、暗めなものを想像していたのですが、最終的に救いのある物語として終わっていたからか、読みやすく面白かったです。
人形に憑かれた人々を巡る傑作ミステリ
あらすじ
天才人形作家・如月まゆらが作り出した精巧な人形「まゆらドール」とアングラ劇団の女優・聖。とある人形に魅入られた青年・了は壊れてしまった「まゆらドール」と出会い、修復を試みるうちに聖と出会う。
とある人形は聖と瓜二つの容姿を持ち、了は人形に魅了される一方で聖にも惹かれていく。
そんな中、聖が所属する劇団では聖が女優として人形の役で「コッペリア」を上演することとなり、登場人物の過去や愛憎など様々な思惑が絡み合いながら、物語は意外な結末へと進んでいく。
私は加納朋子の作品を本作で初めて読んだのですが、どうやら同作者の他作品やシリーズには温かく優しい日常の謎を描くものが多いらしい。
(「新境地」としての驚きを感じるには読む順番を間違えたか...)
文体自体は個人的には読みやすい部類に入ったので、いつか他作品も読んでみて、暖かく優しい成分だけも感じてみたいです!
天才的な人形師、人形に惹かれた芸術肌なパトロン、人形に魅入られたストーカー、人形そっくりの少女、と全てが人形にまつわる主要な登場人物たちで構成されており愛情、憎悪、嫉妬と少し耽美で倒錯的な雰囲気の幻想小説を思わせるような作品に仕上がっており、止まることなく読み進められたのも良かったです。
愛憎渦巻く物語、そして切ない謎と少し優しい結末。
序盤から登場人物たちの生い立ちが語られ、了の凄絶な過去や聖が今の自分を形作ることとなった信念のようなものが描写されており、そこから人形に関連するパトロンの創也や人形作家の如月まゆらの誕生など、登場人物たちそれぞれに対する掘り下げなどが、割と丁寧だったため、その後語られていく愛憎渦巻く物語もより情念みたいなものを感じながら読めた気がします。
勘の良い方であれば途中から時系列が違うことなどに気が付きそうな伏線が多く存在し、トリック的に終盤で大きく驚くことはないものの、淡々とした描写や群像劇的に様々な登場人物の視点で描かれる仄暗い物語と終盤の光が灯るかのような救済に加納朋子の温かさの一端も感じることができて良かったです。

