紺野天龍『神薙虚無最後の事件 名探偵倶楽部の初陣』(講談社タイガ)の感想になります。
※ネタバレを少し含みます※
紺野天龍『神薙虚無最後の事件 名探偵倶楽部の初陣』(講談社タイガ)
文庫化を心待ちにしていた紺野天龍の新たなる"探偵"作品
あらすじ
大学の一角を占有する謎の団体〈名探偵倶楽部〉。
一員である白兎と後輩の志希は、
路上で倒れた女性にある奇書の謎を解いてほしいと依頼される。不可解な密室、消えた寄木細工の秘密箱、突如炎上する館。
不可能犯罪の数々が記された書籍「神薙虚無最後の事件」は残酷な真相を指し示すが――。
「誰かを不幸にする名探偵なんていりません!」
緻密で荘厳な、人が死なないミステリ。
ついに読みたかった本作が講談社タイガから文庫化されて、しかも文庫書き下ろしで
シリーズ続編を連続刊行してくれるとは....そんなに一気に紺野天龍作品を
接種しちゃって良いのですかと問いたくなるくらいには舞い上がってます。
(レーベル的にそのまま講談社文庫から出ると思っていたのですが、タイガから
出版されたのも、読んでみるとライト寄りのため少し嬉しいところでございます)
探偵ポジションの各キャラクターたちが己の信念と知恵によって生み出す
それぞれの推理を以て作中作「神薙虚無最後の事件」のあまりにも不可解すぎる
様々な謎を解き明かしていく構成で論理やどこかメフィストらしくもある
作品の雰囲気は技巧と細工に満ち溢れており、何度もどんでん返しを喰らって最後まで
とても楽しく読むことができました!
多重解決による真相に次ぐ真相が導く、人が死なないミステリ。
意外と「現実離れした設定を持つ記号的名探偵」や
「義賊的な世界を股にかける怪盗王」などのキャラクターと設定面を立たせた
キャラ文芸寄りのミステリかと思いきや、流石の紺野天龍。
館モノ、未解決事件、荒唐無稽な密室殺人などなど
しっかりと本格ミステリの様相に仕上げてきております。
本作では作中作を巡って、<名探偵倶楽部>の面々が各自推理を披露していくのですが、
その度に出てくる推理に納得があり、またあっさりとロジック部分をひっくり返される
という面白さと驚きの連続を感じることができます。
各々の推理パートではかなり強引なロジックで思わずいくら何でも無理があるだろと
突っ込みたくなるような大技から、機転を利かせた小技まで、あらゆるトリックが
それなりの説得力を持って展開されていき、それぞれの推理から連続して生まれる
コントラストのようなものが読んでいて感じられたのも面白かったです。
来栖さんも可愛すぎるし、所謂ホームズ&ワトソン的な関係性から淡いラブコメの
波動まで感じますが、結末としては最終的にハッピーエンドを突き詰める展開として
物語の最後まで辿り着いたときの余韻もあり、大変良かったです。
シリーズモノで続編も連続刊行されているため、是非読んでみてはいかがでしょうか。
今のところ2025年発売で文庫作品の推理小説の中でも、
かなりトップレベルで面白かったです!
二作目の感想はこちらからどうぞ!