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【感想】乾緑郎『機巧のイヴ』(新潮文庫)

乾緑郎『機巧のイヴ』(新潮文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

乾緑郎『機巧のイヴ』(新潮文庫

《機巧のイヴ》三部作の一作目

読んだのは文庫発売当時なのですが、かなり面白い作品でした。

当時はシリーズ化すると思っておらず構成自体も連作短編集の形だったため、読み進めていくうちに本作の要である機巧人形の伊武を巡る物語が怒涛の勢いで進んでいくので、夢中になって読み進めてしまったことは記憶に新しいです!

続編も新大陸編や更に時代が進み高度成長した日本を舞台に進んでいき、よりスチームパンク感のあるものや近未来以上の描写などがあって大変面白いので是非、本作を読んでから2作目以降を読んでいただきたいですね。

画像の通り、文庫版の装画も格好良く伊武が時代の変遷を経て、そこに存在するようなシリーズで統一感のあるデザインになっており、その点も好印象です!

SF、伝奇、時代小説、様々なジャンルが融合した想像力を刺激させる小説

あらすじ

舞台は、幕府と天帝家という二つの勢力が存在する架空の都市「天府」。

天府城で開かれた闘蟋会で、江川仁左衛門が機巧人形の蟋蟀を斬り捨てられる事件が起こり、その事件をきっかけに、遊女の羽鳥は、仁左衛門が追う「千年の秘術」と伊武の秘密に関わる事件に巻き込まれていく。

人知を超えた機巧技術によって生み出された美しい機巧人形「伊武(イヴ)」を巡る陰謀と謎が、それぞれの思惑と天府の命運を賭けた物語が未曾有の結末へと走り出すーー。

時代背景時代は江戸時代と思しき時間軸として進んでいき、ほとんど生身の人間の外見を持ち思考、行動が可能なオーバーテクノロジーの"機巧人形"が鍵となる。

本編内でも語られているが、人間と同じ見た目で同様の思考を持った行動をするのは最早そこに魂が存在し、違いなどはないのではないか、と考えさせられる命題も物語の中で随所に感じられ、生身の等身大の女性として描かれている伊武だからこそより真に迫る部分を感じることができました。

また、本筋のお話が進んでいく中で機巧人形が自発的に何かを企てるというよりかは殆ど全て人間が企て、信じ欺き掻き乱すのが対比として描かれていたように感じ、上記がより際立っていたことも良かったです。

機巧人形と人とが交わり生まれる人情、SFと伝奇のバランスの良さ、本作独特な世界観の中で語られる伊武の"人生"が大変魅力的で和製スチームパンク雰囲気と合わさりかなり面白かったです!