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【感想】木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(講談社タイガ)- 地獄からの生き返りを賭けた推理ゲームが始まる。

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(講談社タイガ)の感想になります。

※ネタバレを少し含みます※

木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(講談社タイガ

死者復活、自分を殺した犯人を地獄から推理せよ。

あらすじ

「犯人がわからない? あなたは地獄行きね」
死者復活を賭けた推理ゲーム!
俺を殺した犯人は誰だ? 現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘――沙羅。

赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、

あるゲームを持ちかける。

自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。

犯人特定の鍵は、死ぬ直前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。

生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける――。

『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(木元 哉多):講談社タイガ|講談社BOOK倶楽部

 から引用

メフィスト賞受賞作で、続編が出ているシリーズもの。

本作は1話完結型の短編集となっており、霊界で死後の判決を受けるときに

地獄行きを迫られた人間が、自分の死を記憶と閃きで制限時間内に推理するといった

一種の安楽椅子探偵的構成になっている。

 

タイトルにもある閻魔大王の娘、沙羅は主人公であり、メインの登場人物なのだが、

推理を行うのは死んだ人間であり、沙羅自身はあくまで解決編と補足を行い、

復活をサポートする舞台装置的な役割を持っている。

一見冷たそうに見えながらも、生き返った際のサポートを行うなど人情味溢れる

性格で表紙に可愛らしいキャラデザが描かれているのもあり、文章に+αで

沙羅のキャラクター像が想像できて、その点はかなり良かったです。

死の前後で変わる人間関係や感情のカタルシス

ある種「読者への挑戦状」的なフェアなロジックで、死んだ人間たち視点から

進んでいく分、分かりやすく伏線も散りばめられており、ミステリとしては読者が

入り込みやすいし、死んだ登場人物それぞれに物語があって良くも悪くも

印象や人間関係の見方が変わったりする部分も、本作特有の面白さだと思います!

 

また意外と沙羅がそれぞれの登場人物に投げかける言葉の節々には共感できるものが

あって、超常の存在だからこその人間を大局的な物の見方で見ているような意見があり

どこか自分にダメなところがあるからこそ、指摘の鋭さは真をついていたのではないでしょうか。

 

文字通り生まれ変わっていくようなエピソードもあり、推理やロジックの部分も

面白いが登場人物たちの人間物語の短編集としても面白かったです!

シリーズものであり、文体も比較的ライトでミステリ初心者の方々にもおすすめ

できる作品だと思います!ぜひ読んでみてはいかがでしょうか!