杉井光『世界でいちばん透きとおった物語2』(新潮文庫nex)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
杉井光『世界でいちばん透きとおった物語2』(新潮文庫nex)
故人が残した物語から、隠された真意を読み解くビブリオミステリ
あらすじ
新人作家の藤阪燈真の元に奇妙な依頼が舞い込む。
コンビ作家・翠川双輔のプロット担当が死去したため、
ミステリ専門雑誌『アメジスト』で連載中の未完の作品『殺導線の少女』の解決編を探ってほしいというものだ。
担当編集の霧子の力を借りて調べるうちに、
小説に残された故人の想いが明らかになり──。
各種メディアで話題沸騰。新人作家と敏腕編集による、ビブリオ・ミステリ第2弾!
まさか続編が出るとは思っていなかったのですが、読んでみるとあらすじからも
分かるとおり、前作のような大掛かりな仕掛けに頼らずとも正統派なビブリオミステリ
としてしっかりと面白かったです。
前作も故人が残した物語から隠された謎を調査していく構成自体は変わらず、
本作も故人が残した未完成の作品から結末までを調査する流れとなっている
所謂作中作を解いていく形で前半の導入から中盤までは作中作がそのまま載っており
主人公と共に読み進めていき、中盤〜終盤からはいざ解決編を探って行く構成でした。
このシリーズは今後も同様のビブリオミステリでやっていくんですかね...?
霧子さんと主人公のバディ的な立ち位置は上手く双方の魅力を引き出せているので、
舞台装置的になりつつも、意外と好きな方なのでシリーズ化するのであれば、今後とも
読みたいなとは感じられました。
コンビ作家の片割れが残した優しい嘘が混ざった作品。
結果として引き継ぐ形として主人公が結末を描き切るのはある程度予想がついておりま
したが、「何故未完だったのか」「時系列がおかしいのは何故か」などの肝心のトリック
部分については予想できず、また本作でも描かれている「驚かせるのと同時に納得させ
ること」を体験できたのは、成功していた気がします。
2と銘打たれた割には続編としての2で、タイトルの意味がかかったシリーズとなって
いる気はしないですが、最後のページを確認すると意外と何のために描いたお話なのか
は少し感じられたので、その点はよかったです。
(ただ無印に込めた意味がそのまま同じく2に込められているかと言われると完全でな
いので、あまり釈然としておりません...)
前述しますがミステリとしては物語の構成とビブリオミステリとしての題材が
上手く絡み合っていたので、前作ほどの物理的な仕掛けはないにせよ、面白いミステリ
なので前作の文体や雰囲気が好きな方は読んでみるのをオススメします!
一作目の感想はこちらからどうぞ!