野崎まど『舞面真面とお面の女』(メディアワークス文庫)の感想になります。
※ネタバレを少し含みます※
野崎まど『舞面真面とお面の女』(メディアワークス文庫)
一代で消えた幻の大財閥の当主が残した奇妙な遺言と仮面の少女の謎
あらすじ
第二次大戦以前、一代で巨万の富を築いた男・舞面彼面。
戦後の財閥解体により、その富は露と消えたかに見えたが、
彼はある遺言を残していた。
“箱を解き 石を解き 面を解け よきものが待っている――”
時を経て、叔父からその「遺言」の解読を依頼された彼面の曾孫に当たる青年・舞面真面。手がかりを求め、調査を始めた彼の前に、
不意に謎の「面」をつけた少女が現われて――?
「舞面真面とお面の女 新装版」野崎まど [メディアワークス文庫] - KADOKAWA
から引用
野崎まど作品特有のラブコメのようでラブコメでない、ライト文芸テイストな
キャラミステリでした。設定も主人公・舞面真面(まいつらまとも、と読む。初見だと
読めないですよね)の祖先である過去に財閥の当主として栄華を誇った時代に残した
「遺言」の謎を解いていき、その遺言を解いた先にはーー。
といった形で所謂財産の遺言とイメージすると血縁による人間関係がドロドロとした
某横溝的なものを思い浮かべるかもしれませんが、
単純にその謎を解いていくだけ一本に絞った物語で逆にそれ以外は特に印象がなく
記憶に残りにくい作品となってしまったかもしれないですね。
逆に上記の謎を解いていくまでにテンポよく個性的なキャラ同士の
少しギャグテイストな掛け合いで進んでいくため、読みやすさはありました。
序盤ヒロインの水面もキャラと掛け合いから伝わってくる可愛さがあって、
後半にあまり出番がなかったのが少し残念なくらいキャラに可愛さ的な魅力を
持たせるのが上手く、オタク的な嬉しさもありました。
お面の謎、物語のオチ、二転三転した結末
野崎まどの1作目『[映]アムリタ』でも感じましたが、所謂ミステリとしての謎の
後に更に後追いで物語のオチとして更にひっくり返してくるのが、
前半から構成してきたギャグ有りなノリから一転してシリアスな雰囲気に上手く
落とし込んで更には二転三転させる展開を描くのが上手いんですよね。
クライマックスでは「仮面」を本質や内面などに広げていき、
最終的に主人公の異質さを関連付けていたのですが、物語中では後半でいきなり
出てきた主人公の特異性を明文化してあるように感じられず、少し違和感を持った
ものの仮面の少女みさきと人外特有の様子を白黒ハッキリと区別してつけていく
様子を着地させているのは、やりたかったこととして伝わってきたので
良しとしています。個人的には上記の構成と展開に面白さを感じることができたので
同著者の3作目も読んでいきたいですね。楽しみです。