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【感想】滝川さり『あかずめの匣』(角川ホラー文庫)- 「あかずめ」という怪異から逃れるにはーー

滝川さり『あかずめの匣』(角川ホラー文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

滝川さり『あかずめの匣』(角川ホラー文庫

「あかずめ」に関わる4人の物語から、あなたは逃れられるか?

あらすじ

その怪異は人を閉じ込めて殺す。すべての真実をあなたは解き明かせるか。

冠村には“窒息の家”と呼ばれる廃墟があり、「あかずめ」という怪異の言い伝えがあった。
離婚を機に地元の冠村に戻った介護と育児に追われる女性、後輩達と“窒息の家”に足を踏み入れた大学院生、
ある目的のために「あかずめ」の呪いを探る高校生、代々呪いを受け継いできた赤頭家の女。
「あかずめ」に関わった4人の物語から、呪いの条件を見破り、死を回避せよ――。

「あかずめの匣」滝川さり [角川ホラー文庫] - KADOKAWA から引用

面白かった!それぞれ時代も場所も登場人物も異なる視点から語られる「あかずめ」と

いう怪異のお話。怪異というよりも呪いに近いもので、呪いゆえの理不尽さを感じられ

更にホラー的な恐ろしさはもちろんのこと、人怖的なお話も各エピソードで見られて

読んでいて何度もリアルとフィクション織り混ざったような恐怖が面白かったです!

 

またミステリとまではいかないまでも、呪いとは、呪われる条件は?

呪いを回避するには?などの先の展開をどんどんと読ませるための展開も多く

仕掛けられておりホラーとしても物語としても良い体験型ホラーとして機能してましたね。

 

元祖ホラー小説を思わせる上手な体験型ホラー

今回構成されていた4編のどれもが人間自体の闇を凝縮したような部分と

痛ましい風習から生まれたものというのが本能的な恐怖を煽ってきているのもあり、

ラストの展開から、我が身も危ういと感じさせる呪いの伝播性を活かした

元祖ホラー小説のような終わり方も上手くしてやられましたね...

 

「人を閉じ込めて殺す」「助けを呼んでも誰にも気が付かれない」など

呪いが発動する条件や恐怖を感じる根源みたいなものは分かっているのに

全ての物語で同じ展開にならないように構成を意識した、一辺倒にならない工夫も

感じられた部分も個人的にはかなり良かったし、謎が明かされるたびに先の気になる

展開が何度もやってくるので終盤まで、すっと読み進めてしまいました。

今年発売のホラー小説の中でも上位に入る面白さでした!

気になった方は、是非読んでみてください!