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【感想】横関大『スマイルメイカー』(講談社文庫)- 家出少年、女性弁護士、犯罪者、それぞれが乗車する黄色いタクシーが運ぶのはーー。

横関大『スマイルメイカー』(講談社文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

横関大『スマイルメイカー』(講談社文庫)

「スマイルタクシー」が運ぶ乗客と交差する人間ドラマ

あらすじ

家出少年が、濡れ衣を着せられた「犯罪者」が、

バツイチの女性弁護士が、街中でタクシーを止める。

お人好しドライバーたちは誰も拒まない。

やがて少年は失踪し、タクシーが消える。

どんな逆境にも諦めず、ひたむきに生きる人々にもたらされる結末は?

乱歩賞作家が贈る、感動と興奮の傑作長編ミステリー!

『スマイルメイカー』(横関 大)|講談社 から引用

横関大さんの作品の中でも、個人的にトップ3には絶対に入ると思っているくらいには

面白い作品です!また、私が読んだ小説の中でも個人的に思い入れのある一冊です。

(横関大さんの作品の中でも最初に読んだ作品でハマる好きになる切っ掛けの作品)

 

本作は複数のタクシー運転手が乗客を乗せて、それぞれの視点から物語は進んでいき、

その中でも笑うことができないタクシー運転手の五味はどんな客でも必ず笑顔にする

ことを目的地に運ぶことを信条に「スマイルタクシー」と名乗っている。

そんなタクシーがとある小学生にハイジャックされている中で他にも五味の同僚が

運転するタクシーには続々と変わった客が乗っていき、それぞれバラバラだった視点が

最終的には一つの物語に帰結するかの如く、伏線が回収されてハッピーエンドになる

様子が最高すぎますね...

あそこまで巧みにミステリ的に人間ドラマを演出し、それぞれのバックグラウンドが

絡み合って生まれる感動的な結末がとても良かったです!

運命的な乗車と一つになる家族の温かみのある物語

五味などの登場人物に悲しいバックボーンがあるため、より感情移入しやすく

構成の妙はかなり伊坂的なエッセンスも感じさせつつ上手く点と点が線に

結びつく構成も驚きと感動を感じました!

 

少しネタバレになるのですが、少年・優に関する部分のホームドラマ的な感動、

そして舞台設定やその他にも諸々全てがひっくり返るようなどんでん返しも

上手く作用し、しっかりとオチとして着地しているのもかなり好きなんだよなぁ...

全てに意味を持たせることは難しいけど、登場する様々な舞台装置や設定を

活かして読みやすい文体にまとめ上げるのは流石の横関大さんといったところ

でしょうか。

 

個人的にとても推したい一作なので、気になった方は是非読んでみてください!