伽古屋圭市『断片のアリス』(新潮文庫nex)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
伽古屋圭市『断片のアリス』(新潮文庫nex)
脱出不能のVRゲームで起きる殺人事件、辿り着く世界の真相とはーー
あらすじ
雪と氷に閉ざされた現実世界から離れ、
人々は生活のほとんどをVRシステム―ALiS―の中で過ごしていた。
傷つくことのない穏やかで平和な仮想空間で。
しかし突如、椎葉羽留は囚われた。
ログアウト不能の狂気の館で、連鎖する殺人。
そしてたどりつく、この創られた世界の真相と、彼女の正体とは !? 衝撃の結末に驚愕するVR脱出ミステリ。
『断片のアリス』 伽古屋圭市 | 新潮社 から引用
舞台設定が面白かったのは良かったですね。
序盤から現実世界は崩壊しており、最早VR世界でのみ活動しているが、
突如としてログアウトできないクローズドな環境に放り込まれて、
次々と起こって連鎖していく殺人は、よりクローズドな状況に拍車をかけて
緊迫感を煽っていたのも良かったです。
殺人事件が起こっていく理由づけも舞台設定として巻き込んでおり、
その点でも不可解な部分はなかったのも良かったとも思います。
意外とミステリとしての様相が強いのかと思いきや、ガッツリとSF色強めな
物語としての側面も出ていたため、そこも個人的には色々な味わいになっていて
好印象でした。
仮想空間のクラスタ内で起こる殺人事件の結末は...
意外とサスペンスフルな形で物語自体はデスゲーム的に進んでいくのですが、
多少のグロ要素としての殺人描写もあり、苦手な人は苦手な部分も一部存在しました。
ただ、個人的には物語のオチとして絡む某要素と、このデスゲームが起きた理由に
あまり自分の中で繋がりを感じず、最終的な物語の意味みたいなものを
見いだせなかった部分が個人的には残念でした。
次々と人が死んでいき、序〜中盤の物語の展開とスピード感は読み進める手も早く
面白さを感じられ、ただ題材を下地にした結末に関しては、
もちろん面白かったのですが少し残念だなと感じる部分がありましたね...
意外と題材的にはハマる方々が多そうな物語で色々と仕掛けが施されており、
刺さる部分も散見されるので気になった方は是非、読んでみてください〜