麻耶雄嵩『化石少女と七つの冒険』(徳間文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
麻耶雄嵩『化石少女と七つの冒険』(徳間文庫)
3年生となったまりあと前作の最後から続く学園生活の延長線。
あらすじ
この学園は呪われている!?
白雪にまみれ赤いロープで手首を結び合った三生徒の死体、
男子の制服で死んでいた女子生徒……良家の子女が集う京都の名門高校で、
またまた相次ぐ怪事件に、名探偵まりあの血が再び騒ぐ。
神舞まりあは、自分以外の部員一人だけという零細古生物部を率いる
化石オタクのお嬢様。そして、誰にも認めてもらえない女子高生探偵だ。
これまた誰にも見向きもされない古生物部に、なぜか加入してきた怪しい一年生。
むりやりお嬢様のワトソン役にされ続けてきた男子部員が抱え込んだ黒い秘密。
その上、新たな生徒探偵まで登場。いかがわしさ倍増の果てに、
絶対予測不能の結末が!ミステリ通をのけぞらせた、
これが危なすぎる学園ミステリだ!
化石少女と七つの冒険 - 徳間書店 から引用
楽しめました...楽しめましたが、どうしてもシリーズものという都合上前作と
比べてしまうと正直にいうと本作は一歩及ばずパンチが弱かったと感じて
しまいましたね...後述しますが、本作の終盤にも所謂仕掛けが施されているのですが、
そこに至るまでの道筋みたいなものが少し薄味で終盤にパンチを喰らうには
弱すぎたなぁ...と言った印象でした。
物語の構成自体はおおよそ前半部分は前作と変わらず、あとは殺人事件も変わらず
起こります。ただ少しテイストが違うのは、まりあの推理をワトソン役である彰が
自身の殺人がバレるリスクを少しでも減らすために、間違った方向に推理を
導く形となっていた。
それに加えて新入部員と新たな探偵の存在が出てきて、物語は進んでいくのだが
本作の重要な過程に結構出てくるにも関わらず、それぞれの人物像の描写が薄すぎて、
前述した通り上手くハマらなかったかなぁと思います。
ただミステリとして見ると各短編でのトリックなどはしっかりと本格ミステリらしい
ものが小粒揃いで描かれているので、その点は評価できますね。
本作のオチと彰という人物について
前述した構成自体に関する評価は少し微妙なのですが、終盤以外で彰の視点から
描かれる少しの焦燥とまりあに対する執着や独占欲のようなものが見え隠れしていた
描写などは、前作の殺人をしていたという事実と照らし合わせると徐々に彰自身が
壊れていっているようにも途中感じられて(亜希子の件などで揺れ動いている部分も)
最後の「禁じられた遊び」では、そのタイトルを回収するが如く、物語の結末としての
落としと麻耶雄嵩が読者に投げつけてくるダークさを感じられて良かったとは
思います。
シリーズとして続編が出るかは、少し怪しい気もしますが出たら出たで、
また新たな構成の妙を期待してしまいそうですね!
麻耶雄嵩が好きな方には結構ハマる気がする一作となりますので、
気になった方は是非読んでみてください〜
また一作目の感想も書いていますので、もしよろしければ是非〜
