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【感想】島田荘司『UFO大通り』(講談社文庫)- 変死体とUFOの目撃証言、御手洗潔の冴え渡る推理によって導き出される結末。

島田荘司『UFO大通り』(講談社文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

島田荘司『UFO大通り』(講談社文庫)

不可解な状況が多すぎる表題作と御手洗の思考を追いながら読める中編。

あらすじ

UFO×変死体=?

天才 御手洗潔の推理は飛躍する!

鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。

白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。

同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、

UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理はいかに!?

「遠隔推理」が冴える、中編「傘を折る女」も収録。

『UFO大通り』(島田 荘司)|講談社 から引用

御手洗シリーズ自体は結構読んでしまっており、未読作品も少なくなってきました。

本作も名探偵の御手洗らしさを感じさせる飛躍的な推理が光っていて良かったです!

 

表題作の「UFO大通り」では殺人事件の遺体が白いシーツでぐるぐる巻きかつ、

ヘルメットとゴム手袋を装備、更にはガムテープが大量にぶら下がった室内では

部屋の隙間もガムテープで塞がれているという状況で

近所のお婆さんがUFOを目撃したというド派手な舞台設定がされている中、

御手洗がいとも簡単に華麗な推理で殺人事件を推理するといった流れで

こうした謎のぶっ飛んだ派手さは、まさに島田荘司らしく更に御手洗の推理も

普通であれば辿り着けないようなトリッキーな推論を重ねて真相に辿り着く過程は

読んでいて面白かったですね。

 

読み終わってみると、偶然の連続と少し無理なロジックのこじつけとして

感じてしまい、結末としての呆気なさもありますが、

本作以外にもシリーズを通しての特徴である島田荘司らしい豪快な謎の提示と

少し強引な解決が受け付けなくて苦手な人には少し厳しいかもですね。

 

猪神刑事という特徴のあるキャラクターの登場で、更に事件が突飛化すると思いきや

御手洗自身のキャラの強さが勝ってしまい、相乗効果で掛け合い的な部分が

良くなっていたように感じました。やはり名探偵に突っかかる刑事というポジションが

あると本格らしさがあって読み応えという点で一つポイントになりますよね。

雨降る中で傘を折る女という奇怪な状況を伝聞から推理する思考追跡型の中編

中編「傘を折る女」では珍しく御手洗の思考を石岡と一緒に追うことができる形で

物語が進んでいくのが、いつもとは別の角度で楽しむことができました。

ただ論理の飛躍であったり、少し強引とも言える結びつけが多く、

ラジオのリスナーのエピソードの伝聞形式で聞いた「傘を折る女」という

エピソードから推理している故の仕方なさではありますが、合間合間でついていくのが

少し大変でしたね。

 

途中実際に事件が起きた当時の犯人の描写が差し込まれているのですが、

そこも文量が多く、若干のくどさを感じつつも構成としては御手洗自身の

冴え渡る推理力はやっぱり凄いとなるような、キャラクターの魅力の部分を

押し出した内容としては良かったのかなと思います。

 

読み終わってみれば、どちらも同じトリックが採用されており、どちらも強引さと

乱暴な推論は目立ちますが、それを楽しんでこその御手洗シリーズですよね。

御手洗シリーズが好きな方にはオススメできる面白い内容となっていたので、

是非読んでみてください〜!