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【感想】彩藤アザミ『あわこさま─不村家奇譚─』(新潮文庫)

彩藤アザミ『あわこさま─不村家奇譚─』(新潮文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

彩藤アザミ『あわこさま─不村家奇譚─』(新潮文庫

「あわこさま」について、手記を通して語られる一族の謎。

あらすじ

東北地方の旧家・不村家では数代に一度、特別な子供が誕生する。

人智を超えた才知を授かることから繁栄の兆しと崇められる一方、「あわこさま」と呼ばれる怪異があると畏れられてもいた。

異形の奉公人たちの手で守られる平穏が瓦解したとき、人々は思い出す。

──あわこさまは、不村に仇なすものを赦さない、と。

危険すぎるホラーミステリ。

『不村家奇譚─ある憑きもの一族の年代記─』改題。

『あわこさま─不村家奇譚─』 彩藤アザミ | 新潮社 から引用

不村家にまつわる「あわこさま」が関わる因縁が過去から手記形式で視点を変えて語られていき、現代まで様々な形で関わり最後にはゾッとさせる終わり方となっていたのが面白かったです!

前半は手記形式で不村家と言う憑き物筋の旧家に仕える菊太郎の視点となり、不村家の人々が血筋の因縁としてかたわの人々を集めていると言う舞台設定と旧家と周辺の村人との確執など、時代背景がかなり古い設定と核心的な部分は語られない構造もあってか、少し読みづらいものの「あわこさま」と言う家に生まれる子どもの体の一部を奪う代わりに、天才的な才能を与える異形が当たり前に信じられ、不村家に仇なすものを排除するという怪異の性質が客観的に存分に語られており、前半でも読み進めていくうちに物語にのめり込むことができました。

 

とある事件から一家は途絶えて残った人々は離散するものの、そこから更に引き取られた先での登場人物とその子孫の生活などが「あわこさま」に関わる様々な出来事を通して、現代まで黎明に続く恐怖や伏線を張りつつ、異形ゆえの耽美さのようなものを上手く表した短編などもあってか、様々なグラデーションとして物語に彩りや楽しみ方をもたらしていたのも読んでいて面白かったと思います!

『白木蓮』や『鬼百合』の章は上記の美醜や耽美などの系譜が強いものとなっていて、好きな人には特にオススメの部分ですね。

 

終盤では現代編に突入し、比較的近代に生まれた不村家の血筋の人々と周辺の友人たちが「あわこさま」と不村家の呪いをロジカルに解き明かすため、過去の登場人物たちの悔恨や、一族の因縁にどう折り合いをつけて生きていくのかをモダンホラーテイストな文体と合わせて楽しむことができましたね。

更に最終盤にはエピローグとして、血筋や土地に憑く"続く"怪異という性質をしっかりと発揮していてホラーとしての落とし所としてかなり良いオチでした。

 

過去と現在で、大きく語り口と物語のテイストが変わりつつも、登場人物たちの因縁や血筋にまつわる「あわこさま」と言う異形の怪異がどう恐怖をもたらすのかが描かれており、終盤にはモダンホラー的に怪異を解き明かす部分は合わせてミステリ的にも楽しむことができ、かなりオススメの一作となっております!

気になった方は是非読んでみてください〜。