背筋『文庫版 近畿地方のある場所について』(角川文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
背筋『文庫版 近畿地方のある場所について』(角川文庫)
立ち位置が変わる登場人物、変化する構成──だが恐怖の源泉は変わらない
"新しい"情報をお持ちの方はご連絡ください。
私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間だ。
収録されているテキストは、様々な媒体から抜粋したものであり、その全てが「近畿地方のある場所」に関連している。なぜこのようなものを発表するに至ったのか。
その背景には、私の極私的な事情が絡んでいる。それをどうかあなたに語らせてほしい。私はある人物を探している。
その人物についての情報をお持ちの方はご連絡をいただけないだろうか。
※単行本とは内容が異なります。ご了承ください。
単行本との違いとしては、以下かなぁ。
・登場人物
・終盤の展開
・「石」の怪異メインではなく、「赤いコートの女」をより深掘り
・袋とじ内の写真
「※単行本とは内容が異なります。ご了承ください。」の一文から単行本を最初に読むことにしましたが、確かに単行本と物語が違い、単行本はモキュメンタリーホラーとして特化していた印象で、袋とじの写真なども単行本の方が怖く、ホラーとしての怖さは単行本の方があったのですが、文庫版に関しては物語が綺麗になっていて、ホラーとしての怖さもありつつ、物悲しさを感じる結末になっていたので、より物語として楽しむことができた印象を受けました!
語られていた取材の内容や掲載された雑誌の内容などに細かい部分に違いはあれど大筋の内容は変わっていなかったのですが、土着型のホラー感があった怪異の部分が語られず、あまり怪異としての怖さはなくなっていたのは少し残念でした。
ただ、その分終盤を文庫版用にリライトして登場人物や物語の構成の変更などを行い「幽霊や怪異が存在するのは死んだ人がいるから」という、死んだ人との関係の部分にフィーチャーした物悲しさを演出していたのは、物語としてのエッセンスになっていて良かったと思いました。
やっぱり当事者の目線で「何故、赤いコートの女という怪異が発生したのか」から深掘りされると怖い対象というより、少しの同情や当事者の苦しさも感じる描写になっていたので、そこはかなり成功していたように感じます。
個人的にはホラーとして楽しかった単行本の方が面白かったのですが、文庫版になって手軽にオススメしやすいホラーとなってもいたので、気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
また単行本の感想も書いておりますので合わせて見ていただけると幸いです!
