市川憂人『灰かぶりの夕海』(中公文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
市川憂人『灰かぶりの夕海』(中公文庫)
世界が豹変する、騙されずにはいられない愛と謎の物語。
あらすじ
波多野千真の前に現れたのは、亡き恋人と瓜二つの顔と声で、同じ名前《夕海》を名乗る少女。記憶がないという彼女を保護した千真だが、仕事で立ち寄った家で、不可解な事件に巻き込まれる。それは密室殺人。
しかも被害者は恩師の亡き妻とそっくりな女性で…。自分は一体、何に巻き込まれているのか?
世界が反転するミステリ。
灰かぶりの夕海 / 市川 憂人【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア から引用
いやぁ〜〜〜〜〜〜、面白かったです。
前半で世界が変わってしまった原因が流行り始めた時期とマスクが必須など、コロナが流行った時と同じなので明言されていなかった分「コロナで変わった世界」だと勝手に決めつけてしまったし、恋人と瓜二つの少女の登場して「過去から恋人だった少女がタイムスリップしてきた」というSF要素の組み合わさった舞台設定の物語だと思っていましたが、そこから全てが反転する気持ちよさと、千真と夕海の物語として幾重にも張り巡らされた伏線と展開で終盤とエピローグ合わせて読後感が凄い良かったです!
上手いこと現実世界であった時系列に沿ったパンデミックという先入観、そして怪しいインタールード、そこから起きる恩師の殺人事件、全て悲しいすれ違いから起きたものだったが、上手く張り巡らされた伏線を活かした解決編。どれもが面白かったですね。
密室殺人事件自体も少し後出し感はあるが、本作の核となる舞台設定に合わせたものとなっており、解決編では前半で出た伏線も上手に繋がっていたので、総じて良かったと思いました。
終盤で明かされるパンデミックの真実、千真の恋人である夕海が何故今になって生き返ったかのように目の前に現れたかがプロローグとの繋がりと合わせてピースが全て合わさったのが良かったですね。
そこからエピローグで更に展開に一捻り加えて殺人事件のトリックを踏襲したどんでん返しを入れてちゃんと千真と夕海の物語となっていたのも嬉しい。素晴らしかった。
序盤は本作の世界観に入り切るための説明などがあり、物語に入り切るまでに時間が少しかかる印象を受けるも、殺人事件の起きる中盤からエピローグにかけてはスピード感と読後の気持ちよさが段違いでした!
現代本格ミステリの名手としてしっかりと面白さのあるロジックと構成、そして舞台設定の全てを生かし切った物語だったと思います。気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
