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【感想】伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』(幻冬舎文庫)

伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』(幻冬舎文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』(幻冬舎文庫

「マイクロ」サイズのスパイの二人が奏でるアンサンブルのようなファンタジー小説

あらすじ

付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、

どこにも居場所がないいじめられっ子、いつも謝ってばかりの頼りない上司……。

でも、いま見えていることだけが世界の全てじゃない。知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり。残業中のオフィスで、事故現場で、フェス会場で、奇跡は起きる。優しさと驚きに満ちた現代版おとぎ話。

マイクロスパイ・アンサンブル / 伊坂 幸太郎【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア から引用

音楽フェスで配布した短編小説とまとめて文庫化でいくつかエピソードが追加された小説。ジャンルが悩ましいが小人サイズの世界のスパイ二人、そして現実世界の等身大な人間のサラリーマンの二つの視点で進んでいき、その音楽フェスの開催とともに一年ずつ時を重ねていく描写が面白く、それも伊坂幸太郎特有の描写で描かれることから読んでいるだけでも楽しめたのは大きかったなと思います。

 

物語自体は音楽フェスで出演したバンドの歌詞の一部が引用されて、その一文に沿ったような展開なども見せており、登場人物たちのどこかゆるっとして何かに気付かされる美しい文章表現など、読んでいて表情が緩むようなお伽話的な面白さを伊坂幸太郎というフィルターを通して語られていて、伊坂らしい作品の接種という意味では良かったと思います。

 

ただ結局読み終わってみれば、全体的に奇跡の連続のような話で分かりやすく明文化されたような面白さはなかったかなと思ってしまいました。あまり盛り上がりどころを自分自身が掴めなくて結局最後まで読んで、「うん、伊坂幸太郎らしい文章だった」という感想しか残らなかったなぁと...

読むタイミングによって、その読んだ人によって見える景色が変わるような作品。伊坂幸太郎らしいエッセンスも感じるので、伊坂幸太郎の表現や文体が好きな人にはオススメできそうです!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。