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【感想】方丈貴恵『アミュレット・ホテル』(光文社文庫)

方丈貴恵『アミュレット・ホテル』(光文社文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

方丈貴恵『アミュレット・ホテル』(光文社文庫

ホテルにある絶対的ルール、そのルールの元推理が行われる探偵VS犯人の頭脳戦。

あらすじ

〈アミュレット・ホテル〉は犯罪者の楽園。滞在中、2つのルールさえ遵守すれば、警察の介入は一切なく、銃でも偽造パスポートでもルームサービス可能、どんな非合法なサービスでも受けられる犯罪者御用達ホテルだった。

守るべきルールは以下の二つ。

①ホテルに損害を与えない

②ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない。

そんな絶対的ルールが破られる時、ホテル探偵が独自の捜査で犯人を追い詰め、相応の対価を支払わせる。ホテル探偵VS犯罪者の頭脳戦、濃密なロジックで犯人を炙りだす本格ミステリー。

アミュレット・ホテル - 光文社 から引用

読みやすいし、とても面白かった!最初の短編からジャブのように仕掛けられる真っ向ストレートの本格ミステリ、更にはその後の短編も"犯罪者の楽園"と呼ばれるほどの犯罪者にとってのハイグレードホテルという舞台設定を活かした華麗なロジックに基づいた本格ミステリとしての仕上がりがあり、元伝説の殺し屋で探偵の桐生というアウトローな世界観にしっかりとフィットした探偵が描かれているのも高得点。

 

※以下、ネタバレを含みます※

 

アミュレット・ホテル

犯罪者御用達である「アミュレット・ホテル」がどういう場所かを説明し、ホテル内で働いている主要な登場人物の紹介回。もちろんルールに抵触する殺人事件がホテル内で起きてしまい、ホテル探偵である桐生が出動する事態から物語は始まる。

密室殺人事件であり、犯人である女性が殺人を行っている様子が冒頭で描写されているように見えるが...それすらも伏線であってホテル探偵である桐生の性別誤認の叙述トリック、そして終盤で描かれた「同じ殺害方法で罰を与える」ことに倣って殺人を行うのが、実は冒頭の描写であったという構造、そして密室となった客室で殺人が行われたという部分についてもあっさりと解決する三重のトリックを一気に短編で味わうことのできた衝撃が凄かったです。

構成の妙と短編で表現した技術で一番本作の短編内で好きですね。

クライム・オブ・ザ・イヤーの殺人

ホテル探偵である桐生の過去と前進、アミュレット・ホテルに勤めることとなった経緯を描いた短編。ホテルで行われたイベントで桐生しか犯人になり得ない状況から推理を行って罪を晴らすお話。少しメタ的だけど前編から犯人足りえないとなるので、なんとなくオチまで見えたが、良い本格ものらしい短編でしたね。犯罪者御用達という部分も上手く使っていた印象。

一見さんお断り

犯罪者の末端でホテル内部から外部の人の視点で進んでいくお話。

ホテル別館の堅牢さも明らかになり、これぞまさに探偵といった形で外堀を埋めていく論理的な推理を行う本格ものらしいミステリとなっていましたね。

私もあからさまな仏の話が出てきたので一緒に火葬されたのかと思っていましたね。見事に騙されました。

タイタンの殺人

ホテルオーナーである諸岡しか殺人を行えない状況でオーナーを救うべく桐生が推理に挑む短編。オーナーの過去やホテルへの出資者の会が開催されたことでホテルの成り立ちなども少し明かされましたね。

二重にも三重にも伏線があり、見事回収され切っていたのはお見事でした。犯行の意図だけでなく、しっかりと過去のエピソードにも絡めて展開されており読んでいて楽しかったですね。

 

※以上、ネタバレを含みます※

 

〈アミュレット・ホテル〉シリーズとして続編も今年に単行本で出ているようで、文庫化されるのが楽しみですね。ミステリ初心者にもオススメできるし、本格ミステリ好きにもオススメしやすい作品でもあると思います。私は〈竜泉家の一族〉シリーズも大好きなので本作が気に入った方には是非そちらも読んでほしいですね〜。

気になった方は是非本作も読んでみてください〜。