出水千春『吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
出水千春『吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)
おせっかいなさくらが料理を通して、色々な人の心を解きほぐしていく
あらすじ
たいせつな父を亡くし、大坂から江戸に出てきたさくらには夢がある――
一人前の料理人になり自分の店をもつ。
だがなんの因果か、吉原の妓楼〈佐野槌屋〉の台所ではたらくことに。
乏しい食材にめげそうになるが、自慢の腕をふるい、様々な悩みを解きほぐす――
最高位の花魁の落涙の理由、男衆の暴れ騒ぎ、旅立つ人形師の心の迷い……
温かな料理で人を包み込み、そっと後押しする。
さくらの心意気がまぶしい、人情料理小説!
吉原美味草紙 おせっかいの長芋きんとん: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ から引用
意外と料理小説自体は好きで結構読んでいるのですが、本作も基本的な構成はよくある
料理小説と変わらず、主人公のさくらが一癖もあるキャラクターたちの心をほぐして
より心の距離を近づけていき、問題を解消していく構成でオーソドックスながら
面白かったです!
ハヤカワ時代ミステリ文庫から出版されていますが、あまりミステリ色はなく、
時代小説や料理小説の面が強い気がしますが、そこまでさほどミステリ要素に期待も
していなかったので物語として楽しむことはできました。
キャラクターでいくと主人公のさくらは30代とのことでしたが、もう少し若く見えて
しまうくらいにはアグレッシブさがある行動力などが目立ち、他キャラとの対比の
ためとはいえ違和感もありましたね...
後は肝心の吉原の料理番という舞台設定でしたが、吉原自体の明るい部分しか
語られていないようにも見えて、正直ライト寄りの物語なのかなとも思いました。
主人公自体のキャラクター付は良かったし、料理番の竜次や吉原の遊女の面々、
過去の男など他のキャラクターも良かったのですが、正直舞台装置的な役割を
果たす際の整合性や設定面でのライトさはどうしても気になっちゃいますね。
肝心の料理ですが、美味しさを想起させる描写は具材をどう調理していくかで
深掘りするような描写などもあまりなく、調べるくらいには料理の具体性が
あまりつかないものも多く結構調べたりしてしまいましたね...
個人的には美味しそうではあるけど、調べてやっと「美味しそう」が頭の中で
補完できる状態でした...
(まぁ詳細に書きすぎると解説になってしまうのを危惧してなのか...
でも料理を題材にするならもう少し料理描写にも力を入れて良いのでは...)
細かい点で気になるところはあるものの、お話としてはまぁまぁ楽しむことが
できました。シリーズものとして後2作あるので、そちらも読んでいきたいと思います!
気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
