出水 千春『吉原美味草紙 懐かしのだご汁』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
出水 千春『吉原美味草紙 懐かしのだご汁』(ハヤカワ時代ミステリ文庫)
佐野槌屋から追い出された先の居酒屋でお節介を発揮し、また新たな問題に首を突っ込んでいくさくら
あらすじ
手作りの料理で人の心をほぐすさくらは、肝の臓の病で亡くなった佐野槌屋の
楼主・長兵衛に、娘のおるいと継母のお勢以のことを頼まれた。
二人の心を近づけたいさくらだが、長兵衛の弟・喜左衛門の奸計によって佐野槌屋を
追い出されてしまう。行き着いたのは瓢亭(ふくべてい)という不味さで名高い
居酒屋。ここで働きながら佐野槌屋に戻ることを誓うさくらは、
店の亭主の正平が亡き妻の思い出のだご汁を作ろうとしていることを知り……。
吉原美味草紙 懐かしのだご汁: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ から引用
前巻では結構大団円で終わった佐野槌屋のお話から、また舞台設定は同じで続くかと
思いきや冒頭からいきなり長兵衛が亡くなってしまい、そこから長兵衛の弟が
さくらを追い出して、また居酒屋での生活を描くのは良かったかなと思います。
舞台設定が異なるだけで、さくら自身のお節介が変わるわけではないのですが、
また様々な問題に首を突っ込んでいき、料理を用いて登場人物たちの心をほぐして
いく姿勢は変わらず楽しむことができました。
相変わらずミステリというには、謎らしい謎やトリックらしいトリックなども
ないのですが、前巻から続くつながりや新たに出てくる振袖小僧の問題、
居酒屋の正平を取り巻く肉親関連の問題などが、徐々に明らかになっていく展開は
物語としてまぁまぁ面白かったです。料理の描写も比較的良かったと思います。
おるいとお勢以の問題も解決して、こういう家族の絆ものが多く展開されており、
その点ではもう少し他の題材も欲しいとやっぱり思ってしまい、その点がミステリと
絡めばなお良さそうなのになぁ...と惜しい気持ちです。
(色恋や家族、などの問題のみで少し食傷気味になってしまうのが残念)
まぁ次がシリーズ最後みたいですね、似たような流れだとは思いますが、
そちらも読んでいきたいと思います!
気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
また前作の感想も書いてますので、もし良かったら見ていただけると幸いです。
