道尾秀介『片眼の猿―One-eyed monkeys―』（新潮文庫）の感想になります。
※ネタバレを含みます※
道尾秀介『片眼の猿―One-eyed monkeys―』（新潮文庫）
小さな違和感が、やがて巨大な真実に姿を変えて浮かび上がる叙述の妙。
あらすじ
盗聴専門の探偵、それが俺の職業だ。目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。
楽器メーカーからの依頼でライバル社の調査を続けるうちに、冬絵の存在を知った。
同業者だった彼女をスカウトし、チームプレイで核心に迫ろうとしていた矢先に殺人
事件が起きる。俺たちは否応なしに、その渦中に巻き込まれていった。謎、
そして……。ソウルと技巧が絶妙なハーモニーを奏でる長編ミステリ。
いやぁ面白かった、ハードボイルドな世界観と読みやすい文体に個性あるキャラクター
たち、そして軽めの叙述トリック（トリックというほど重要でもないが）が結末を彩り
見事タイトルを上手く回収していたと思います。
実はローズフラットの登場人物たちが全て身体障害者であったという部分が後半で
明かされるが、事件のトリックというよりヒロインである冬絵との関係値にしか
使用されていなかった部分が主題なので、ミステリ的な面白さというより
単純に構成の妙という印象が強かったですが、その点「眼に見えているものばかりを
重要視する連中に、俺は興味はない。」などテーマ性を突きつけた作品として楽しむ
ことができたので良かったです。
序盤から中盤にかけて明かされる三梨の過去と過去の同居人・秋絵の自殺、そして
現在の事件が上手く絡み合ってミステリとしての面白さはしっかりとあったと
思います。テクニカルな部分とミステリとしての面白さが上手に相乗されていて
個人的には驚きなどもしっかりと感じられる良い作品でした。しっかりと道尾秀介
らしい作品だったなと感じます、個人的には道尾秀介入門編としても推しやすい物語
ですが、少し今の時代にはセンシティブな内容のような気もします。
ただ、舞台設定や構成、そして終盤の展開などはかなり面白く今読んでも名作だなと
思いました、気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
