夜繙く

主に推理小説などの感想や日常のこと

【感想】滝川 さり『ゆうずどの結末』(角川ホラー文庫)- 読むと呪われて死ぬ本、悪意や偶然なども絡み登場人物それぞれの結末が描かれるホラーの連作短編集

滝川 さり『ゆうずどの結末』(角川ホラー文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

滝川 さり『ゆうずどの結末』(角川ホラー文庫

偶然、特別感、いじめ、親子など様々な因果が繋ぐ呪いの本にまつわる物語

あらすじ

こんな結末は耐えられない――。
大学に入学して3か月、菊池斗真はサークルの同級生・宮原の投身自殺を目撃

してしまう。死因に不審な点もなく遺書もあったことから、彼女の死は自殺と

断定された。宮原の死から数日後、菊池は同じサークルに所属する先輩の日下部

から、表紙にいくつかの赤黒い染みがある本を手渡される。それは、宮原が死の

瞬間に持っていた小説らしい。「ゆうずど」というタイトルの小説は角川ホラー文庫

から刊行されている普通のホラー小説で、特に宮原の死と結びつけるような内容は

描かれていなかった。しかし、本を読んだ日下部はその翌週に自殺をしてしまう。

そして日下部の死後、なぜか菊池の手元には「ゆうずど」の本が現れていた。

何度捨てても戻ってくる本。そして勝手に進んでいく本に挟まれた黒い栞。

自分にしか見えない紙の化け物。菊池は何とか自らに迫る死の呪いを回避するため

に、ある手段を講じるが――。その■■を、絶対に読んではいけない。

あなたの身に恐怖が迫る、新感覚ホラー誕生!

「ゆうずどの結末」滝川さり [角川ホラー文庫] - KADOKAWA から引用

気が付けば手元にあり、読んでしまった暁には死ぬ呪いがかかってしまう

「ゆうずど」という小説、黒い栞が勝手に進んでいき、最後まで行ってしまうと

結末に沿った死に方をしてしまう。更には呪いの化け物も見えてしまうという

オーソドックスな呪いのホラー系の物語で安定して面白かったです!

 

「ゆうずど」を取り巻く連作短編集ですが、各短編集ごとに主となる人物は違い、

展開される物語も「ゆうずど」に帰結するとはいえ、それぞれ違うものであったのは

良かったかな。

最初の主人公のお話「菊池斗真」では、捨てても帰ってくる、呪いを解く方法や

法則性もない、ただ黒い栞が最後までいき命が尽きてしまうタイムリミットが

あることと、化け物が見えてしまうという圧倒的絶望感という追い詰められる恐怖を

上手く演出していましたね。

 

第二話「牧野伊織」はSNSでの繋がりなど、現代らしい点も含めて上手く

「オカルト好き」を描写されていましたが、見事に叙述的な部分がハマって

おりましたね。意外と最初から気がつかずに見事に騙されました。冒頭と終盤で上手に

繋がっているんですよね。肥え太った自意識というものもある種化け物じみている

ということがしっかりとホラーに繋がっており、人間の怖さも出ていました。

 

第三話「藤野翔太」でも第二話と同様に呪い自体よりも人間自体の怖さが表立った

ように感じました。いじめる側といじめられる側、いじめられる側が呪いを持って

見事に復讐を果たすものの、そこから更にもう一段階恐怖を描き切ったのはかなり

良かったですね。そこから更に「ゆうずど」の謎も深まりましたが...

 

第四話「青井克生」では「ゆうずど」の呪いの強力さを嫌でもかというほど

感じましたね。かなり分かりやすく外と内の伏線が張られていたり、父親との過去の

確執なども語られており、オチは予想しやすかったものの、しっかりホラーらしいオチ

をつけてくれましたね。(洒落怖みたいな展開かなとも思いましたが舞台装置が

類似しているだけでした)

 

そして最終盤にはしっかりと「角川ホラー文庫」から発売された小説と、著者の

アナグラムを用いた部分にも触れて、「ゆうずど」の意味と小説という媒体である

点を上手く活かし切っておりました。

 

中々オーソドックスな呪いに関するホラーでしたね、結末が分かりやすかったり

ホラーとして馴染み深い展開も多く読みやすかったので初心者の方にもおすすめ

しやすいと思います!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。

また著者の他作品の感想も書いてますので、もし良かったら見ていただけると

幸いです。

kuromaru8888.net