紅玉いづき『サエズリ図書館のワルツさん1』(創元推理文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
紅玉いづき『サエズリ図書館のワルツさん1』(創元推理文庫)
紙の本が貴重な文化財となった世界、図書館を訪れる人は何を思い、どう生きるのか
あらすじ
世界情勢の変化と電子書籍の普及により、紙の本が貴重な文化財となった近未来。
そんな時代に、本を利用者に無料で貸し出す私立図書館があった。
“特別保護司書官”のワルツさんが代表を務める、さえずり町のサエズリ図書館。
今日もまた、本に特別な想いを抱く人々がサエズリ図書館を訪れる──。
書籍初収録短編を含む、本と人の奇跡を描いた伝説のシリーズ第1弾、待望の文庫化。
「大戦争で紙の本が殆ど消えてしまい、貴重な文化財となってしまった世界」という舞台設定の中で紙の本が集まった図書館を中心に展開されていく、様々な人の一幕を通した物語は人の暖かさや今の自分の日常になっている紙の本というものに対してのありがたみを改めて感じる作品でした!
紙の本が貴重になっている世界で、おそらく紙巻きタバコであろうタバコに火をつけることや、カフェインが健康被害があるとして禁止の動きになっていく流れなのにタバコが禁止にならなかったり、食糧事情が不透明な形で描写があまりされていないなど、「紙の本が貴重」という舞台設定をやりたいのは分かるが、近未来にしても少し世界観が雑になっている印象は拭えなかったですね...
都市部という大戦争の跡地というディストピアを描いたのに、細かい部分でこの世界が描かれていないので、好きなこの世界観に浸りきれなかったのが残念すぎる。
ただ、そこを抜きにすればワルツさんとサエズリ図書館を通した、登場人物たちのこの世界を生きる人生の一部を「紙の本」という媒体を通して物語として触れられたことは良かったです!
カミオさんのお話では、本を通した暖かさを感じ、モリヤさんのお話では祖父が孫を思う気持ちはどんな状態になっても何物にも変えられない色褪せない愛情なども感じられました。その他にもワルツさんのお話では、ワルツさん自身の過去の一部やこの図書館がこの世界として異物として映っているという事実など、様々な感情の側面からこの作品を感じられ、世界観に沿った面白さは感じられました。
蛇足ですが、創元推理文庫のジャンルが国内ミステリになっており、あまりミステリといったようには感じませんでしたね...
惜しい点はあるものの描きたいことはかなり個人的に好きな部類にあるため、第二作も読んでいきたいと思います、気になった方は是非読んでみてください〜。
「よい、読書を」
