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【感想】今村昌弘『屍人荘の殺人』(創元推理文庫)

今村昌弘『屍人荘の殺人』(創元推理文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

今村昌弘『屍人荘の殺人』(創元推理文庫

映研内のとある過去✖️ゾンビ✖️連続殺人の組み合わせ、剣崎比留子シリーズ一作目。

あらすじ

神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、ペンション紫湛荘を訪れる。

初日の夜、彼らは想像だになかった事態に見舞われ荘内に籠城を余儀なくされるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。たった一時間半で世界は一変した。

屍人荘の殺人 - 今村昌弘|東京創元社 から引用

かなり面白かったです。個人的に一番良かった点は「ペンション外はゾンビで溢れた」という非日常を上手くクローズドサークルに用いて、2020年代から増えたメタ的な名探偵と助手という構造、そしてライト文芸と本格ものを合わせたようなそれぞれのキャラクター像も上手くハマっていた点が総合的に良かったところですね。

 

序盤から明智と葉村のコンビでホームズとワトソンを意識した構成から始まり、そして見るからに曰くありげな映研の面々に今にも怨恨による殺人が起きそうな過去と本格ミステリらしい土壌が整ったところにゾンビパニックと一気に物語に引き込まれていった。

比留子とのホームズの交代も一筋縄ではいかず、事件の中で名探偵然とした活躍をする裏腹に葉村が腹の中で抱えている激情も上手く終盤の展開に作用していましたね。その激情と葉村の行動が犯人である静原のきっかけになっていたのも物語の面白さを助長していたと思います。

人によっては犯人のキャラクター像が受け入れられなかったり物語に対する文体が軽すぎると少し苦手な人もいるかもしれませんが、個人的には読みやすく上手く本格ミステリと融合させたと感じました。

 

肝心のハウダニットも本作の中でも触れられていますが、密室トリックが出し尽くされている中で本作のクローズドサークル要素と上手く組み合わせたものとして生まれ変わらせていることでよりミステリらしいものに仕上がっておりました。

 

斑目機関などの巨悪による匂わせなどシリーズものとしての今後の展開も併せて楽しみな伏線と終わり方になっておりましたね。各種賞を総なめしていることもありますが2017年発売ミステリの中でもトップクラスに面白い作品でした!万人にオススメできるミステリだと思います!

気になった方は是非本作も読んでみてください〜。