道尾秀介『透明カメレオン』(角川文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
道尾秀介『透明カメレオン』(角川文庫)
ラジオから語ることで「嘘」を「本当」にしていくパーソナリティ
あらすじ
ラジオパーソナリティの恭太郎は、素敵な声と冴えない容姿の持ち主。バー「if」に集まる仲間たちの話を面白おかしくつくり変え、リスナーに届けていた。大雨の夜、びしょ濡れの美女がバーに迷い込み、彼らは「ある殺害計画」を手伝わされることに。意図不明の指示に振り回され、一緒の時間を過ごすうち、恭太郎は彼女に心惹かれていく。「僕はこの人が大好きなのだ」。秘められた想いが胸を打つ、感涙必至のエンタメ小説。
あらすじにもある通り、ラジオパーソナリティの主人公が行きつけのバーの仲間たちの話を「面白おかしく」作り変えてリスナーに話す+突如バーに現れた謎の女が殺害計画を持ち込み、振り回されながらも時間は進んでいく構成になります。
終盤では叙述的なトリック含めですが、登場人物それぞれに重い過去があり、それを面白く作り変えて話すことで、その辛さから逃げることができているところも含めて向き合い続けることで辛さを背負うこととは別の選択肢が用意されているという一つの道を提示する役割もあったのかなと思います。
ただ、一つ不満を挙げるとすれば、その提示されたものに対する物語的な終着点が描かれておらず読者の想像にお任せする形となっていたのは正直もどかしさを感じてしまい、個人的には少し惜しかった点かなとも思いました。
読み進めていく分には楽しめたし、終盤のラジオパーソナリティらしい展開での機転のかけ方は物語的なエッセンスとしても面白く、叙述トリック的な展開や本作での伝えたかったことを最後にあしらう描写なども良かったとは思います。
作者の他作である「カラスの親指」にも似た雰囲気でコミカルかつ他キャラも交えてバタバタと物語が進んでいく構成は読んでいて楽しかったのですが、どうにも終盤が突然すぎて個人的には馴染めていた空気から一気に冷めてしまったような部分があり、余韻も感じられないまま終わってしまったという印象が強くなってしまいましたね...
ただ道尾秀介らしさの感じられる文体と描写も多く、作品としての評価は置いておいて雰囲気だけでも感じたい方はオススメできるかなと思います。気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
