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【感想】似鳥鶏『理由あって冬に出る』(創元推理文庫)

似鳥鶏『理由あって冬に出る』(創元推理文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

似鳥鶏『理由あって冬に出る』(創元推理文庫

誰もいない部屋から人が消失、そして壁男の出現。噂の謎を解く青春ミステリ。

あらすじ

某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。

かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立会いが必要だ。

……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。

理由あって冬に出る - 似鳥鶏|東京創元社 から引用

長らく積んでおり似鳥鶏さんの作品は初めて読んだのですが日常の謎系の青春ミステリで内容がミステリとして安定しており面白かったですね!

ただデビュー作だったからか、結構文章に癖があって慣れるまでに少々時間がかかりました。怪談による噂、青春らしい周辺人物の色恋沙汰など、それぞれが主人公の葉山くんの視点から描かれる軽快でコミカルな語り口に馴染んでいき、後半はこの作品の味として感じられたので、良い方向に作用したのかなと思いました。

 

柳瀬さんもヒロインとして可愛いし、伊神さんも探偵ポジションとしてしっかりと一風変わった個性を持ったキャラのようでキャラクターごとにもシリーズの中で楽しめそうな要素が多くて、良かったですね。

幽霊話と壁男など、それぞれの怪談と謎があり、そしてプロローグとの結びつきとエピローグのゾッとする怖さが怪談という舞台装置と合わせて上手くホラー的な要素と噛み合っていて、ミステリとしてもオチとしても上手くかかってましたね。

 

少し残念な点としては登場人物が多く、序盤〜中盤は結構キャラごとの喋るシーンでごちゃっとしてしまい、意外と把握が難しくなってしまった点は構成的に少し残念でしたね...後半はメインキャラのみの登場と物語を上手く畳むフェーズに入っていたこともあり読みやすくなっていたので、上手くリカバリしていましたが、前半の読みにくさとキャラクターの把握で挫折する人もいそうだなと思ってしまいました。

 

シリーズ一作目でデビュー作ということもあり、少し習作らしさもありましたが、慣れてみると青春ミステリらしさがあり、しっかりと推理小説として面白かったです。シリーズものなので、次回作も読んでいきたいなと思います!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。