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【感想】大神晃『蜘蛛屋敷の殺人』(新潮文庫nex)

大神晃『蜘蛛屋敷の殺人』(新潮文庫nex)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

大神晃『蜘蛛屋敷の殺人』(新潮文庫nex

恋人は女子大生イタコ探偵、20年前の未解決事件を樋山と共に二人の名探偵が推理合戦で結末を描き出す。

あらすじ

寒い正月のことだった。恋人の現役女子大生イタコ探偵・水鏡氷華(みかがみひょうか)とともに飛騨の山奥“蜘蛛(くも)屋敷”を訪れた僕は、迷宮入りした女当主密室殺人事件の謎を調査する。高額賞金に釣られて現れた怪しい便利屋・樋山(ひやま)さんと氷華の火花散らす超絶推理合戦。二人の名探偵が辿り着いたのは、哀しきひとつの真実だった。雪が降るたび思い出す、あの美しい名探偵を。元カノ実家訪問系トラベルミステリ。

『蜘蛛屋敷の殺人』 大神晃 | 新潮社 から引用

元カノ実家訪問系トラベルミステリ、という新たなジャンルのミステリですが、シリーズ1作目に負けず劣らずしっかりと本格ミステリの様式に則っており、ちゃんと面白かったです!過去に起きた恋人の女子大生イタコ探偵の水鏡氷華が母も巻き込まれた未解決事件を時に"蜘蛛屋敷"を訪れるところから本編は始まり、その後未解決事件の当時の現場にいた人の代理として樋山も賞金目当てでやってくるという導入。二人の名探偵が依頼主である針夫を納得させるための筋書きを推理合戦の形で紡いでいく。

イタコ探偵という"容疑者の思考や動きをトレースしてまるで憑依したかのように推理する"形式は小説映えしますね。影沼→内城→木澤とトレースしていき、納得させるために結構無茶な推理を重ねるも冷静に反論していく樋山という構図は多重解決ミステリのようで楽しめました。

 

四章からどんどんと事件の核心に近づき、樋山の推理が披露されていくのだが足跡がないトリックに関しては最初に図が出てきた時に何となく分かったのだが、そこから切断された電話線やトランクの中などの細かいトリックで事件の全体像が少しずつ彩られていったのは本格ミステリらしくて面白かったですねぇ。

どんでん返し的な展開と歌を歌って登場する老婆と積年の恨みつらみが残っていたという横溝感満載の事件の終幕になっていたのも個人的にはこの後味の悪さみたいな部分は良かったですね、時効となった未解決事件が故の尾を引く形になっていたのが良かった。

 

そして最後に犯人が分かって事件解決後の後日談かと思いきや、ここでもどんでん返しを仕掛けてきたのが流石でした。女子大生という肩書きを使った年齢誤認のトリックと古賀があえて氷華を指摘することで元カノの愛という呪いをかけてくる描写は良かったですね。

父に似ているという伏線は結構あからさまに張ってあったので、結局のところどこまでが本当の愛だったかは分からないところですが、古賀の印象には確実に残っているというのがズルいですね。煙原の殺人トリックは傾斜を利用したものだとは気がつかなったなぁ...ミスリードを上手く利用した描写がお見事でした。

 

なるべく一作目から読んだ方がキャラクター、特に本作のバディの関係性や"元カノ実家訪問系トラベルミステリ"と呼ばれている所以を感じられると思うので気になった方は是非前作の『天狗屋敷の殺人』から読んでみることをお勧めします!本作もミステリとして樋山の探偵ぶりなどがしっかりと発揮されていてミステリ好きであれば絶対に楽しめる作品になっていると思いました!気になった方は是非本作も読んでみてください〜。