南杏子『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』(幻冬舎文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
南杏子『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』(幻冬舎文庫)
静かな呼吸の先に見える、命の物語。
あらすじ
大学病院の総合診療科から、「むさし訪問クリニック」への“左遷"を命じられた37歳の水戸倫子。そこは、在宅で「最期」を迎える患者専門の訪問診療クリニックだった。
命を助けるために医師になった倫子は、そこで様々な患者と出会い、治らない、死を待つだけの患者と向き合うことの無力感に苛まれる。
けれども、いくつもの死と、その死に秘められた切なすぎる“謎"を通して、人生の最期の日々を穏やかに送れるよう手助けすることも、大切な医療ではないかと気づいていく。
そして、脳梗塞の後遺症で、もう意志の疎通がはかれない父の最期について考え、苦しみ、逡巡しながらも、大きな決断を下す。その「時」を、倫子と母親は、どう迎えるのか?
人間である以上「死」というものは逃れられない、少なくとも現在の医療では永遠の命などはフィクションとして存在するが現実のものではない。
老衰でポックリとご臨終できる分には良いが、病気などで手立てがなく後は余生をどう過ごすか、どう生きたいか、を終末期医療に携わる医師が「治せない患者」にどう寄り添っていくか、が少しのミステリも交えて描かれており、全てにリアリティを感じるほど切に描写されていたのがとても印象的で読む手が止まらない作品でした。
主人公の倫子が大学病院から訪問医療クリニックに出向させられるところから物語は始まり、そこから患者ごとに倫子自身が「死」というものにどう向き合うかを常に見つめ直すように描かれており、最後の父親のお話では読んでいる自分自身も苦しくなるような真摯で考えさせられるお話でした...それくらい最後のお話は真に迫ってくるものがあり、より深い物語になっており、とても面白かったです。
終末医療を見事に描き切り、思わず自分自身が近しい人の最期を看取る場面を想像して感情移入してしまいそうになるほどにのめり込んで読んでしまいました。
大きなテーマであるし、一筋縄では表現できないものを上手く物語に見事に載せ切った一作だと思います。満場一致でオススメできる作品だと思います!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
