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【感想】大山誠一郎『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』(実業之日本社文庫)

大山誠一郎『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』(実業之日本社文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

大山誠一郎『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』(実業之日本社文庫)

多すぎる証人や同時刻に二人の女性が殺されることで成立する二律背反のアリバイの謎が光るシリーズ2作目。

あらすじ

難事件に頭を悩ませる新米刑事は、美谷時計店の店主・時乃にアリバイ崩しを依頼する。湖に沈められた車の謎。パーティ出席者500人が証人となった政治家のアリバイ。異なる場所でふたりの女性が同時刻に殺された結果、生まれた鉄壁のアリバイ。時乃の推理はいかに?第75回日本推理作家協会賞受賞作「時計屋探偵と二律背反のアリバイ」収録。

時計屋探偵の冒険 / 大山 誠一郎【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア から引用

シリーズらしいアリバイ崩しと短編ながらも綺麗にまとまっていたし、それぞれに異なる構成を持ってきていた構成の上手さも感じる面白い一冊でした。収録作の中ではやはり第75回日本推理作家協会賞受賞作の「時計屋探偵と二律背反のアリバイ」が一番面白かったですね。

時計屋探偵と沈める車のアリバイ

「時を戻すことができました」というセリフと共に一瞬のアリバイ崩しは健在、ダムに沈められた高級車、そして割り出された殺人がされたであろう時間帯には麻雀をしていたというアリバイがある。確かに遺産狙いの殺人であれば高級車を沈めるのはおかしいし、雨という状況証拠を完全に読んでいる間失念しておりました。ロードバイクのことなど細かに伏線が張られておりオーソドックスなアリバイ崩しでした。

時計屋探偵と多すぎる証人のアリバイ

戸村の開幕の「灯油で燃やされていた」という失言から燃やされていたことの理由から多数の承認を結びつけて変装が絡んでいるというところから、胃の内容物と安本の殺人まで結びつけることができて、珍しく自分の推理と一致していたのは気持ちが良かった。

時計屋探偵と一族のアリバイ

面白かった。ミステリでよく見る熱を利用したインクによるトリックが使用されていて一件落着かと思いきや、最初のアリバイが崩されることで成立するアリバイが次に起こった殺人に適用されていたのは構成が上手でしたね、少しずつ分かるようになっていた動機の面では被害者と犯人共に同情の余地なし。

時計屋探偵と二律背反のアリバイ

二律背反のアリバイというタイトルに相応しく、同じような時間帯に容疑者の妻と愛人が殺されるという事件が起きて、片方を立てれば片方が成り立たないというアリバイは新しくて面白かったです。被害者の二人を互いに利用していたトリックや味噌汁を食べていないという部分の伏線が物語に上手に作用していたのはお上手。

時計屋探偵と夏休みのアリバイ

時乃さんが遭遇した一番最初のアリバイ崩しの事件のお話。時乃さんにアリバイ崩しの手腕を仕込んだ祖父も登場し祖父が見事に解決し、人間的にもとても尊敬できる人だったのが良くほっこりするようなお話でした。共犯関係とあえて犯行時間では崩せないくらいの粉々になった彫刻を活かしたアリバイ時間確保のトリックは気がつけませんでした。

 

一作目も二作目もアリバイ崩しにフォーカスを絞ったミステリとなっており安定感もさることながら毎回趣向を凝らした短編になっているので、飽きることなく楽しむことができるシリーズで推理好きな人にこそオススメしたくなるような一冊となっております。シリーズ1作目も同様に面白く、本作がハマった人であれば間違いなくハマると思います。気になった方は是非本作も読んでみてください〜。