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【感想】乾緑郎『機巧のイヴ 新世界覚醒篇』(新潮文庫)

乾緑郎『機巧のイヴ 新世界覚醒篇』(新潮文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

乾緑郎『機巧のイヴ 新世界覚醒篇』(新潮文庫)

彼女が目覚め、運命の歯車が廻り始める幻想SFロマン

あらすじ

「あなたは、どなた?」少年が彼女の冷たい体を抱きしめるとき、運命の歯車が廻り始める――。1892年、万博開催を翌年に控え、空前の賑わいを見せる新世界大陸(ムンドゥス・ノーヴス)の都市・ゴダム。万博の利権を巡る人々の争いが繰り広げられる夜、パビリオン「十三層」の頂上で、機巧人形(オートマタ)・伊武(イヴ)が永の眠りから目覚めた。機巧と人間。本当の“心”を持つ者は誰か? 

未曾有の世界に魂が震えるSF伝奇小説の傑作!

『機巧のイヴ―新世界覚醒篇―』 乾緑郎 | 新潮社 から引用

前作から約1001年ほどが経過した新世界大陸が舞台、前作よりも時代が進んだことによる利便性の向上により伊武の神秘性が物語を通してあまり感じられなかったのは少し残念。伊武を主とした物語というより、ジョー・ヒュウガや八十吉といったような伊武を巡るものたちが主軸となった物語に感じられた。

相変わらずのSF的世界観とスチームパンク的な舞台設定を下地とした物語として楽しむことができたし、途中で胸糞悪くなるような悪辣さや思わず同情してしまうような登場人物たちの過去の回想など、キャラクターそれぞれの描写も合わせており、面白かったです。

 

最終的にゴダム万博の顛末は少し薄ら寒さを感じるものがありましたね。万博を通した出来事に悲しさはありますが、伊武と八十吉が長須鯨の箱もちゃんと共に日下國に帰れて良かったです。続きもあり、伊武が更に次の時代に渡っていき、どのような役割を得るのか。そこも期待です。

 

時代の変遷と共に土地を変えてオートマタである伊武の在り方が印象的な本シリーズ、SF伝奇らしいテーマと舞台設定、そして伊武を巡る物語としても楽しめるので気になった方は本作も是非読んでみてください〜。またシリーズの前作の感想も書いておりますので、もし良かったら合わせて読んでみていただけると幸いです。

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