伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(創元推理文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(創元推理文庫)
「本屋を襲う」そこから語られる現在と過去が交差する鮮烈なミステリ。
あらすじ
引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。
伊坂幸太郎らしい他では味わえないどこか現実離れしてコミカルに描かれる「本屋で広辞苑一冊を強盗するためモデルガンで武装する」という入りの舞台設定と登場人物たちの行動原理、キャラが立ってるとも言いますが、それぞれに思惑があって突拍子がなさそうに見えるけど何か一意の真実がある構成は変わらず、2年前の出来事であるペット殺しの事件の過去のお話が交互に語られて交差して、終盤には見事に繋がりあって重なりあう様相もあり、見事に仕込まれたトリックが炸裂していて面白かったです。
タイトルの「アヒルと鴨」自体は上手く、本作のメイントリックである叙述部分で描かれているところに大きくかかっていたし、ドルジの感性を「コインロッカーに閉じ込める」という部分にかけて、やるせなさを演出していたのも上手かったと思いました。前半からの楽観的にも見える話から、どんどんとやるせない、不公平で理不尽な展開も多く、そこから現在と過去が交差した時のドルジの行動は読んでいて心が引きずられるものがありましたね。
伊坂幸太郎らしい、登場人物全てがハッピーエンドとはいかず、やりきれなさを残しながらも読後感の中に少しの清冽さを入れてきて物語的に落とし込む良い作品だったと思います。これこそ推理小説の伊坂作品としてのおすすめ度合いは高めかなと感じます。気になった方は本作も是非読んでみてください〜。
