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【感想】澤村伊智『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫)

澤村伊智『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

澤村伊智『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫)

名前を呼ばれたら、もう逃げられない。比嘉姉妹シリーズ一作目、傑作ホラー。

あらすじ

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の怪我を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。

「ぼぎわんが、来る」澤村伊智 [角川ホラー文庫] - KADOKAWA から引用

怖さと面白さ、どちらもを両立させて尚且つ王道的なホラーの怖さも兼ね備えている傑作の一つだと思います!何より章仕立てで、各章で語られる視点が異なるのですが、その視点ごとに見えている変化していき、人の怖さと怪異的なホラーの怖さのどちらも両方味わえる良い作品でした。

 

最初は秀樹の視点で進み、円満な家庭で育児と仕事を両立して、ただ「ぼぎわん」という正体不明の怪異に怯えているという正体も分からないが、怪異として理由もなく襲われる怖さを演出しており、突如噛み跡があるなど、祖父母の話から紐付けると恐ろしい目に遭ってしまうという恐怖がありましたね。

しかし、第二章の香奈の視点からは秀樹の視点から見えていた真実は反転し、ある種人の怖さというものを感じます。見る側面において変化するというのもホラー的に一役買っており、主観と客観のズレを活かした違いがまず第一に驚愕のあったポイントで物語的にも良かったですね。

 

そして終盤にかけて、野崎、真琴が知紗を守るためにぼぎわんと対峙します。ここは怪異が着々と迫ってくる王道的なホラーとしての怖さがあり、何度も対峙するごとにぼぎわん自身も知恵をつけてきて、電話のシーンなんかは鳥肌級の怖さがありましたね。

最後に向かうにつれて、比嘉琴子とぼぎわんの対決があり、少々ライトノベルっぽさもあるのですが、ホラーとしてあの世とこの世の現実離れさというより、この世の中での現実離れさが受け入れられない人や、超常のものが肉体的に立ち向かうようなバトル要素が苦手な人には少し終盤は厳しいかもしれないですね。

ただ、最終盤にはしっかりとゾッとさせるようなホラー的な余韻を残す終わり方にもなっており、個人的には全部盛りホラーといった感じで十分楽しめた面白いホラー作品だと思いました。

 

当初本作を読んだ時はホラーとしてのトップレベルの面白さに感動しましたね。そこから澤村さんの作品をずっと追っておりますが、本作も比嘉姉妹シリーズとしてシリーズ化しましたし、ホラー小説で何を読もうと悩んでいる人にはとにかくオススメしたい一作となっております!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。