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【感想】道尾秀介『鬼の跫音』(角川文庫)

道尾秀介『鬼の跫音』(角川文庫)の感想になります。

※ネタバレを含みます※

道尾秀介『鬼の跫音』(角川文庫)

心の「鬼」は何を語るのか。最後までスッキリとは終わらせない「S」の存在。

あらすじ

刑務所で作られた椅子に奇妙な文章が彫られていた。家族を惨殺した猟奇殺人犯が残した不可解な単語は哀しい事件の真相を示しており……。(「ケモノ」)同級生のひどい攻撃に怯えて毎日を送る僕は、ある女の人と出会う。彼女が持つ、何でも中に入れられる不思議なキャンバス。僕はその中に恐怖心を取って欲しいと頼むが……。(「悪意の顔」)心の「鬼」に捕らわれた男女が迎える予想外の終局とは。驚愕必至の衝撃作!

鬼の跫音 / 道尾秀介 <電子版> - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア から引用

黒道尾を遺憾なく発揮した暗澹かつ陰鬱な雰囲気の中で、最後まで先を見通せない短編それぞれに違った魅力のあるミステリ短編集となっておりました!

個人的に楽しめたのは「鈴虫」「犭(けもの)」「悪意の顔」で、最後の最後に一気に物語を落としにいき、途中まで語られていた伏線が意味を異なるものにしていく面白さとゾッとさせてくるような演出が上手く仕込まれて表題も回収してくる構成になっていて、ミステリとしても楽しむことができましたね。「世にも奇妙な物語」的な尺と題材からなるテンポ感がより似たような恐怖を煽ってきたのがとても良かったと思います。

 

「箱詰めの文字」に関しては意外と突出したものを感じられず、短編集の中でも一番残念な出来だったかなと思いました。どことなくチグハグさが先に目立ってしまい後半で明かされた結末もいきなり出てきた印象が拭えないまま読み終えてしまいました。

 

「よいぎつね」は幻想怪奇ホラー寄りの面白さで、徐々に過去と現在の境界が曖昧になっていくような暗く引き摺り込まれるような表現が多く、最後まで下降していく表現や心理描写を意図を持って散りばめていた短編だったかなと思います。

「冬の鬼」ではある女性の日記を過去に遡っていき、最後に明かされる女性の行った決断の狂気と、ホラー的な部分の面白さも盛り込みつつ描かれた結末が後味的なものとして尾をひくお話になっていた印象。

 

道尾秀介さんの黒い部分を感じられる恐怖を煽るホラーテイストなそれぞれの物語、そして一筋縄では行かない結末を描くミステリ的な短編、魅力の詰まった短編集になっており道尾秀介さんが好きな人にはオススメできそうな作品だったと思います!気になった方は本作も是非読んでみてください〜。