櫛木理宇『鵜頭川村事件』(文春文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
櫛木理宇『鵜頭川村事件』(文春文庫)
災害により閉鎖された村の中で起きる人間の鬱屈した思いが起こす暴動を描いたパニックサスペンス
あらすじ
墓参りのため、亡き妻の故郷・鵜頭川村を三年ぶりに訪れた岩森明とその娘。突然、豪雨にみまわれ、山間の小さな村は土砂崩れで孤立。そして、若者の死体が発見された。犯人は村人か、それとも―。降りしきる雨の中、父と幼い娘は暴動と狂乱に陥った村から脱出できるのか。血と恐怖のパニック・サスペンス!
まぁまぁ楽しめた。昔の田舎の村で起こる土着的な閉塞感から起こる暴動を描いたパニック✖️ホラー✖️サスペンス作品。一族による支配、家父長制からなる男尊女卑、田舎という限られた空間だからこそ逆らえない理不尽などを描き作品全体の雰囲気は決して明るいものではなく、嫌な雰囲気の描写が続き作品のサスペンス要素の一助になっていたと思います。主人公の境遇も亡き妻の実家に墓参りついでの宿泊で娘共々巻き込まれてしまうという舞台設定も突如迷い込んで遭遇したという部分が演出として読み手側にも上手いこと作用していて良かったと思います。
肝心の結末としては現実味がありそうな終わり方で救いもないものになっていますがそれも血縁というものが織りなす人間ドラマだったと思えばこの後味の悪いやるせなさもありだなと思います。扇動される群衆の集団心理などの人の恐ろしさもあり、事件的な恐怖をしっかりと演出していたのも良かった点でした。残念だったのはエピローグがない分、事件の結果として語られた部分のみしか分からず、その後の当時の顛末に触れた描写がなかったのが登場人物たちの物語としてどうなったのかが分からず、個人的には惜しかったなと感じました。
王道的なサスペンスホラーとなっており、登場人物が冷静なように見える文体も多くパニック感は個人的に薄まっていましたが良い恐怖を演出する人間の狂気と閉塞感が生み出すヒトコワな作品だったと思います。オーソドックスに楽しめるので、田舎と昔特有の災害ホラーなヒトコワが好きな人にはおすすめできると思います!気になった方は是非本作も読んでみてください〜。
