衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 3年生編4』(MF文庫J)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 3年生編4』(MF文庫J)
サバイバルゲームが終わり疲労困憊の中で始まった新たな特別試験、学年最下位は退学の危機もあるルールで綾小路が画策するのは。
あらすじ
3年生の無人島サバイバルゲーム試験は終了。各生徒が疲労困憊の中、次なる『トークン収集特別試験』が発表される。各クラス4人ずつの16人で1グループを作りトークンを収集。全10グループでの順位を競いながらも、試験中にトークンが最初に0になった生徒、試験終了時トークン数が学年最下位の生徒は退学となる。さらにトークンを得る課題も、学力、運動能力といった素の実力が試されるもの。トークンは譲渡可能なものの、広い無人島で特定の生徒への譲渡はタイミングが限定的。そしてルールを利用したある生徒の暴走が始まり――!?
「おまえを退学者にすると決めたのはオレだからな。それくらいの望みは聞こうか」
前巻の「無人島サバイバル試験」が後半戦の前座に過ぎなかったという衝撃の幕開けから始まり「トークン収集特別試験」と名付けられた特別試験が開幕。3年生編における初の退学者を出し、試験でも試験以外のところでも一つの大きな山場といっていい完成度でしたね。正直に言えば、試験の課題内容そのものはそこまで派手なものではないのですが、それを補って余りある綾小路清隆という男の圧倒的な策謀の深さと終盤に向けて加速していく緊張感がありましたね...。今巻で最も印象的だったのは、冷徹な戦略家だった綾小路が初めて「自分以外のために」動いた瞬間であり、椎名ひよりとの告白シーンは前巻まででフラグが立っていたにせよ、良くも悪くもいよいよか...といった感じです。
今巻で最もヘイトを集めたキャラクターといえば、やはり篠原ですね。綾小路の煽りに乗せられ、Aクラスグループ内の不和を拡大させていくその姿は読んでいて思わずイライラさせられましたね。とりわけ、自分の嫉妬心から櫛田に土下座を強いるシーンは擁護しようがなく、池もどう下手に止められないような状況でした。退学という結末は溜飲が下がる一方で構成的な部分と試験の伏線回収として非常によく機能していたと思います。一方、今巻で大きく株を上げたのが櫛田で、土下座を強いられながらも冷静に状況を乗り越え、最後には他クラスの生徒の目の前で篠原に「ブス」と言い放つ痛烈な一言。承認欲求のかたまりとして描かれてきた彼女が、ここまで割り切った行動を取れるようになったことには確かな成長を感じましたね。
そして終盤のゴール前の展開は息をつく暇もなく、綾小路が伊吹を囮に使いながらAクラスに揺さぶりをかけ、それを読んだ堀北が篠原に忠告を入れ、さらにそれを読み切っていた綾小路……という多重構造の読み合いは圧巻でしたね。そして龍園のひよりを使った大博打。こちらも「綾小路ならば必ずひよりの元へ行く」という確信のもとに成り立つ、綱渡りのような作戦だったと思います。クライマックスでは「今オレは明確に自覚している。椎名ひよりという1人の人間に恋をしていると」という言葉と、それに応えるひよりの返答。不合理と知りつつその選択をした綾小路の独白は、これまでの彼のキャラクター像を揺るがすものでありながら、同時にホワイトルーム出身者としての冷徹な側面も失っていないと言う形になって表れておりましたね。「感情を知り尽くしたとき、この繋いだ手を放してしまうかもしれない」という内心の吐露が、この関係の行方に不穏な翳を落としています...。
よう実シリーズを読んでいる人なら迷わず手に取ってほしいですね。ただ本巻を最大限楽しむには2年生編以降の人間関係の積み重ねがあることが大前提なので、そこは最初から追っていって欲しいです。特に、綾小路の戦略的思考や各キャラクターの成長を楽しんできた読者には今巻は刺さるのではないかなと思います。逆に恋愛展開が苦手な方にとっては終盤のトーンが少々異なるかもしれないですが、それを含めても面白い一冊でした。後あとがきにあった新シリーズも楽しみですね。前巻の感想も書いてますので、合わせて読んでみていただけると嬉しいです!また気になった方は是非本作も読んでみてください〜。
