似鳥鶏『小説の小説』(角川文庫)の感想になります。
※ネタバレを含みます※
注釈、単語の意味、引用、検閲、それぞれを活かした短編メタフィクション
あらすじ
いつものように殺人現場に出くわしてしまった名探偵。華麗な活躍で事件が解決した
はずだったそのとき、思わぬ《伏兵》が推理を始め……?(「立体的な薮」)/
異世界転生し、チート能力で無双する。誰もが夢見るシチュエーションに恵まれた
「俺」だったが、最大の敵は、言葉の《イメージ》だった!(「文化が違う」)/
「小説」とは何か、「書く」とは何か。創作の限界に挑む、これぞ禁断の小説爆誕!
(「無小説」)/時は新法が成立し、検閲が合法化された曰本。表現の自由が脅かされ
る中、小説家の渦良は、《あらゆる》手を尽くして作品を書き続けるが――。
(「曰本最後の小説」)
本格ミステリの著者が挑んだ新境地、メタ・フィクション!
あなたが知る小説の概念を覆す、驚きの5編を収録!
あまり楽しみ方が分からなかった作品、新鮮さはあったものの面白いかと聞かれると
試みは新しいけどそこまで面白くなかったと思う。
立体的な藪
ルビとミステリのご都合主義やミステリとしての様式美みたいなものを破って遊ぶ
挑戦作。二点も三点も結末が変わって最後にはルビで遊んだオチ。
感心は起きたけど、何読まされているんだという気持ちになった。
文化が違う
一番物語としては楽しめた、異世界転生したが転生先の世界の言葉の意味が、私たちが
住んでいる世界の言葉の意味と一致せずにシュールな世界になっている舞台設定。
ヒロインの名前がマッスルゴリラ=ウンコナゲルとかどうなってんねん。
無小説
気合いは感じた意欲作な印象。引用で構成した物語、それ以上でもそれ以下でもない。
これも何読んでいるんだという気持ちになった。
曰本最後の小説
検閲が規制されまくった世界でミステリを描く小説家と編集の物語。
どこかに「ありえるかもしれない」と思わせるリアルさも含めた舞台設定。
こうしたら検閲や規制を掻い潜れるのかと色々な仕掛けを施して小説を描く様で
構成された作品、頑張っているなと思った(小並感)
電子版だと特典もついてるし、本作の一部の仕掛けが少し変わった見方になるので、
その点で電子版で読んでみるのも面白いかもしれませんね。どの物語も似鳥鶏さん
の文体で描かれており、読む分にはまぁまぁ楽しめました。
気になった方は是非本作も読んでみてください〜。